「信仰生活････主よ、精一杯のものをお捧げします」
２００５年１０月１６日
「イエスは賽銭箱の向かいに座って、群衆がそれに金を入れる様子を見ておられた。大勢の金
持ちがたくさん入れていた。ところが、一人の貧しいやもめが来て、レプトン銅貨二枚、すな
わち一クァドランスを入れた。イエスは、弟子たちを呼び寄せて言われた。『はっきり言って
おく。この貧しいやもめは、賽銭箱に入れている人の中で、だれよりもたくさん入れた。皆は
有り余る中から入れたが、この人は、乏しい中から自分の持っている物をすべて、生活費を全
部入れたからである。』（マルコによる福音書 12:41-44）」
加古川東教会の皆さんには釈迦に説法で、お話しする必要はないのかも知れませんが、今日
は献金というものについてお話しします。いつも週報を見ますと、礼拝献金、月定献金、特別
献金の口数と金額の報告が載っています。特別献金はさらに、感謝献金として誕生日感謝、結
婚記念、受洗感謝あるいは記念、その他様々な名目の献金があります。しかし、そもそも献金
というのは一体何なのでしょうか。この言葉、他の宗教ではあまり使わない言葉ではないかと
思います。神社ではお賽銭、仏教ではお布施でしょう。仏教ではそれを差し上げている相手も
ちょっと違うようです。神様仏様にでなく、お坊様に差し上げるのがお布施ではないでしょう
か。布施はその文字から分かるように、捧げることではなく、施すことで、差し出す方向が違
います。キリスト教の献金という言葉、もちろん、日本語での場合ですが、戦争中によく使わ
れた言葉なのが気になります。曰く、国防献金とか飛行機献納献金とかです。政治献金という
のもありますから、あまり印象がよくありません。外国の教会の礼拝ではどう呼んでいるのか、
オファーリングとかオファートリーだったと思います。「捧げもの」という意味でしょうか。
席上献金などはコレクション「集金」と呼んでいたと記憶しています。では、ずばり献金の意
味はというと、「献」は「ささげる＝神や目上の人に何かをさしあげる、たてまつる」意味だ
とあります。ですから献金は金銭を献上することになります。
しかし、その精神は何なのかといいますと、それは「感謝」です。そこが神社のお賽銭と全
く異なる点です。本当は神社のお賽銭も、お礼参りの時のそれなどは「感謝」を表すものだっ
たのかも知れませんが、一般に行われているお賽銭のなされ方を見ますと、これは完全に「取
引」です。これだけ差し上げますから御利益をください、ご加護ください、というものです。
キリスト教の献金は、一方的な神様の側からの恵みに対しての感謝以外の何ものでもありませ
ん。そういう意味では、週報の献金の報告で、感謝献金という項目が他の献金と並んで書かれ
ているなら、それはまちがいかもしれません。なぜなら、本当は全部が感謝献金であるべきだ
からです。それは神様が御子イエス様をこの世に下されて、その十字架を通して私たちの罪を
赦してくださり、私たちを永遠の生命に入れてくださるという、それはもう世界中の財宝を積
み上げてもご恩返しできないようなことへの感謝なのです。どれだけ献金しても足りないとい
う性質のものなのです。本当はお金で表すことなどできないものでしょう。事実こんな話があ
ります。有名な伝道者のことですが、その人は子供の時、ある時の礼拝の中で献金を集める袋
が回ってきた時、それを床に置いて、自分がその前に立ち「私を、私の全身全霊を捧げます」
と言ったといいます。その言葉の通り、彼は献身して、（そうです、キリスト教には献身とい
うよい言葉があります。）献身して伝道者になったということです。
ですからお金は象徴です。仮にお金のない人がいたとして、私は教会の掃除をするなどの労
力を捧げますと言ったとしても、それは立派なオファーリング「捧げもの」です。やはり日本
語の献金という言葉が問題のようです。「金」でなくてもさしつかえないのですから。ただ一
般的にはお金で代表させているということでしょうか。貨幣経済の影響力大というべきでしょ
う。奉納物であったものが金銭になったのは、ヨーロッパで11世紀の頃と言われています。し
かし金銭を捧げるということは昔もあったので、事実今日読んでいただいた聖書の箇所もお金
が問題になっています。その上、ここでは賽銭箱という日本の神社と同じ用語が使われていま
すね、まあ翻訳の問題ですが。もう一度読んでみます。
イエスは賽銭箱の向かいに座って、群衆がそれに金を入れる様子を見ておられた。大勢の金
持ちがたくさん入れていた。ところが、一人の貧しいやもめが来て、レプトン銅貨二枚、すな
わち一クァドランスを入れた。イエスは、弟子たちを呼び寄せて言われた。「はっきり言って
おく。この貧しいやもめは、賽銭箱に入れている人の中で、だれよりもたくさん入れた。皆は
有り余る中から入れたが、この人は、乏しい中から自分の持っている物をすべて、生活費を全
部入れたからである。」
「貧しいやもめが来て、レプトン銅貨二枚、すなわち一クァドランスを入れた。」とありま
すが、「レプトン銅貨二枚、一クァドランス」というのは口語訳聖書では「レプタ二つ、１コ
ドラント」となっていました。レプタはギリシャの最小青銅貨で１９５５年に出た解説書で邦
貨５０銭に相当するとありますから、二つで１円です。今ならいくらになりますか。物価が20
倍になっていると見て、20円でしょうか。「自分の持っている物をすべて、生活費を全部入れ
た」ということからすれば、もう少し多いかもしれません。それはともかく、献金は神様への
感謝だという精神から言うと、イエス様の言われる通り「この貧しいやもめは、賽銭箱に入れ
ている人の中で、だれよりもたくさん入れた。」ということは確かです。
ところで、献金は神様への感謝を表すものだとすると、献金するしないは自由です。感謝と
いうものは自由意志でなされるものだからです。また、感謝は金額の多少でなく精一杯かどう
かです。感謝を表すのに、それがいくらでなくてはならないということはありません。感謝は
金額の多少でなく、精一杯かどうかです。神様の大きな恵みに感謝するのですから、それは本
当に精一杯でなければなりません。「有り余る中から入れた」人々より「乏しい中から自分の
持っている物をすべて入れた」やもめのほうがたくさん入れたのです。
ここで、皆さんに考えていただきたいことがあります。私たちの教会では礼拝中献金をお捧
げした後、感謝のお祈りをする代わりに献金の讃美歌を歌っていますから問題はないのですが、
多くの教会では、献金当番の人か、司会者がお祈りをしています。そのお祈りのことを、司会
者はよく「献金の感謝」と言います。これは誤解を招く言葉です。「献金の感謝」というと、
日本語の問題ですが、文法的には、「献金をしてもらったことへの感謝」という意味に取られ
かねません。しばらく教会に来ている人なら誤解はないと思いますが、初めてお出でになった
方はそうお受け取りになるかもしれません。この場所でのお祈りは、礼拝に参加でき、御名を
賛美し、御言葉を聞くことを許され、また新たに生き抜く力を与えられたことへの感謝であり、
さらにはイエス様を通して与えられた神様の大きな恵みに対する感謝、罪の赦しに対する感謝、
永遠の生命に対する感謝なのです。それを「御言葉への感謝」でまとめて表す場合もあります。
この場合の御言葉というのは、イエス様のことも含めて、神様の働きの全部を指しているわけ
です。しかし、今度は、何か牧師が話したことへの感謝と受け取られてはいけません。何も付
けないで、単に「感謝の祈り」と言うほうがいいかもしれませんね。
もう一つのことは、そのお祈りの中でよく言われる「豊かにいただいている中から、わずか
ですがお返しします。清めてご用のためにお用いください。」という部分です。日本人らしい
謙虚さの表れかもしれませんが、どうでしょうか。習慣のようになっている言葉なのでしょう
か。曽根教会の礼拝の中で、加古川東教会にも出席されたことのある得田郁子さんが感謝祈祷
をされた時「精一杯のものをお捧げします。ご用のためにお用いください。」と祈られました。
実は私もかつて献金を集めた後、感謝の祈りをした時、「精一杯のもの」という言葉を使った
ことがありますが、得田さんが祈られた時、それに気付いた人があって、そのほうがほんとう
ではないかとおっしゃっていました。そうです。先にも言いましたように「豊かにいただいて、
わずかをお返しする」ではなく、「豊かにいただいています。精一杯お返しします。」でなけ
ればならないと思います。していることは同じで、言葉が違うだけだと言う人もあるかと思い
ます。しかし言葉というものは力があります。日本では言霊という言い方もあるくらいです。
たとえばこれは鈴木秀子さんが書いておられることですが、「好きになれない人に向かっても、
好きだといいなさい。そうすればやがて本当に好きになれます。」といいます。同じことです。
「精一杯」と言いながら、お捧げするのを惜しむことはできません。「わずかですが、」と言
いながらなら惜しむことも可能です。
ルカによる福音書 7:47 にこんなイエス様の言葉があります。イエスの足に香油を塗って接
吻した罪深い女の話のところです。「だから、言っておく。この人が多くの罪を赦されたこと
は、わたしに示した愛の大きさで分かる。赦されることの少ない者は、愛することも少ない。」
この女性はマグダラの遊女マリヤです。彼女は壺いっぱいの高価な香油を惜しげもなくイエス
様の足にぶちまけた、その時、イエス様の言われたのがこの言葉だったのです。
ところで、同じ時、イエス様はこんなたとえ話をなさっています。これを読むと「わたしに
示した愛の大きさ」ということの意味がよく判ります。ルカによる福音書の７章40節から読ん
でみましょう。「そこで、イエスがその人に向かって、『シモン、あなたに言いたいことがあ
る』と言われると、シモンは、『先生、おっしゃってください』と言った。イエスはお話しに
なった。『ある金貸しから、二人の人が金を借りていた。一人は五百デナリオン、もう一人は
五十デナリオンである。二人には返す金がなかったので、金貸しは両方の借金を帳消しにして
やった。二人のうち、どちらが多くその金貸しを愛するだろうか。』シモンは、『帳消しにし
てもらった額の多い方だと思います』と答えた。イエスは、『そのとおりだ』と言われた。も
う一度先のところを読みます。「だから、言っておく。この人が多くの罪を赦されたことは、
わたしに示した愛の大きさで分かる。赦されることの少ない者は、愛することも少ない。」
ここで話を元にもどします。献金は神様の恵みへの感謝です。感謝の表し方は他にもいろい
ろありますが、その一つです。謙遜で言うのはともかく、もし本気で「わずかなものをお返し
します。」と言うとすれば、どうでしょうか。それは「赦されることの少ない者は、愛するこ
とも少ない。」ということにならないでしょうか。もちろん、私たちはそんなに楽な暮らしは
していません。現実の問題として、わずかしかお捧げすることはできないでしょう。だが、そ
の「わずか」は「精一杯」の「わずか」であるべきです。「貧しいやもめ」の「精一杯のわず
か」でありたいものです。なぜなら、あなたは、全財産を投げうってもお返しできないほど赦
され、恵まれているからです。「たとい人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なん
の得になろうか。また人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。 (マ
タイ16:26)」とありますね、あなたは滅びるはずの命を救われ、永遠の生命を与えられている
のです。どんな代価をはらっても及ばないのです。本当なら、私は、ナルドの香油壺ならぬ全
所有を投げ出してもいいのですが、実生活がありますから、少し残しておくことをお許しいた
だいているのです。
最後に一言申しますなら、献金は直接教会に、あるいは伝道に役立つものだけではありませ
ん。先週の説教の中で言いました「善行も社会活動もできるとすれば、それは救われた者の感
謝から出ることです。」と言うことを逆からいいますなら、今日申しましたように「献金は感
謝をあらわすもの」ですから教会の外での、また直接伝道に関係のないことも、社会での様々
な活動も、拾い意味で献金だと言えるでしょう。そのことを教えてくださったイエス様のお言
葉を読んで今日の説教を終えたいと思います。P51マタイによる福音書 25:35-40です。
「お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をし
ていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれた
からだ。』すると、正しい人たちが王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられる
のを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。
いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。
いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』そこで、
王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、
わたしにしてくれたことなのである。』教会の外の兄弟にしたことは主にしたことであると言
われるのです。
初めにも申しました。この教会の皆さんにはお話しする必要のないことであったかもしれま
せんが、献金の意味の再確認ということでお話しした次第です。
最後に一言申しますなら、献金は直接教会に、あるいは伝道に役立つものだけではありませ
ん。先週の説教の中で言いました「善行も社会活動もできるとすれば、それは救われた者の感
謝から出ることです。」と言うことを逆からいいますなら、今日申しましたように「献金は感
謝をあらわすもの」ですから教会の外での、また直接伝道に関係のないことも、社会での様々
な活動も、拾い意味で献金だと言えるでしょう。そのことを教えてくださったイエス様のお言
葉を読んで今日の説教を終えたいと思います。P51マタイによる福音書 25:35-40です。
「お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をし
ていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれた
からだ。』すると、正しい人たちが王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられる
のを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。
いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。
いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』そこで、
王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、
わたしにしてくれたことなのである。』
初めにも申しました。この教会の皆さんにはお話しする必要のないことであったかもしれま
せんが、献金の意味の再確認ということでお話しした次第です。
最後に一言申しますなら、献金は直接教会に、あるいは伝道に役立つものだけではありませ
ん。先週の説教の中で言いました「善行も社会活動もできるとすれば、それは救われた者の感
謝から出ることです。」と言うことを逆からいいますなら、今日申しましたように「献金は感
謝をあらわすもの」ですから教会の外での、また直接伝道に関係のないことも、社会での様々
な活動も、拾い意味で献金だと言えるでしょう。そのことを教えてくださったイエス様のお言
葉を読んで今日の説教を終えたいと思います。P51マタイによる福音書 25:35-40です。
「お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をし
ていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれた
からだ。』すると、正しい人たちが王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられる
のを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。
いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。
いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』そこで、
王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、
わたしにしてくれたことなのである。』
初めにも申しました。この教会の皆さんにはお話しする必要のないことであったかもしれま
せんが、献金の意味の再確認ということでお話しした次第です。